みなさん、こんにちは。
エンカレッジコースの桑原です。
今日は読書についてお話したいと思います。
読書の好みやスタイルは人それぞれですが、私の場合は、普段用と旅行用でこだわりがあります。ミステリーが好きなので、普段は、主に宮部みゆきさんや米澤穂信さんの小説を好んで読みますが、旅行に出かける際の旅の友は、湊かなえさん一択です。「告白」や「高校入試」の他、多くの作品が映画化、ドラマ化されていて、これまでに出版された作品はほぼすべて読みましたが、どの作品も読み応えがあります。新作が出ると、すぐにでも読みたいところですが、旅行に出るまでは我慢してとっておきます。そういうわけで、私にとって、旅行は読書の楽しみとセットになります。
なかでも特に思い出深いのが「山女日記」です。山を舞台にした8編の物語から成る小説ですが、そのひとつに『トンガリロ』があります。トンガリロ(1967m)は、ニュージーランド北島にある火山で、一帯にはルアペフ(2797m)やナウルホエ(2291m)など複数の火山が連なり、トンガリロ国立公園として世界遺産に登録されています。物語の舞台となるトンガリロ・アルパイン・クロッシングという全長19km余りを6〜8時間かけて歩くコースが特に有名です。また、この一帯は、映画「ロード・オブ・ザ・リング」のロケ地にもなっています。
トンガリロと言えば、私も2012年8月7日に訪れるはずでしたが、前日6日の深夜に約100年ぶりの大噴火が起こったため、幻の挑戦となりました。早朝、目が覚めると大騒ぎになっていたことを覚えています。周辺道路は封鎖され、国内線航空も運休になりました。幸い、宿泊していたのは、トンガリロから数十km離れたところだったため、被害はなかったのですが、トンガリロ行きを伝えていたNZの知人をずいぶん心配させました。車で封鎖区域の手前まで行ってみると、一帯は火山灰で覆われ、文字通り灰色の世界でした。状況や意味合いは異なるのですが、フィッツジェラルドの「グレート・ギャツビー」に出てくるvalley of ashes(灰の谷)を思い出しました。
そして2016年、旅の友として読んだのが「山女日記」です。トンガリロの一編は、噴火後の2013年が舞台となっており、当時を思い出しながら読む進めるうちに気持ちが高まり、2017年12月末に再び挑むことにしました。ところが、この時は出発前から風邪気味で、現地に着くとさらに悪化したため、4日間休養しながらチャンスを伺いましたが、十分回復せず、叶いませんでした。散々な旅になりましたが、それはそれで教訓になりました。それまでの健康への過信を改め、健康管理に留意するようになりました。
一度ならず二度も幻に終わったトンガリロ挑戦でしたが、三度目は、思いがけず、今年の正月となりました。以前ブログで紹介したタラナキに登った際、約200km離れたトンガリロが雲海の向こうに見えたのです。この機を逃すと次はないと思い、翌日移動し、翌々日、ついに念願のトンガリロ・アルパイン・クロッシングを完歩しました。タラナキ・トレッキングの2日後で、筋肉痛に悩まされましたが、物語の描写を所々思い出しながら、気持ちは楽に歩くことができました。余談になりますが、NZ先住民マオリの神話によると、タラナキとトンガリロは女神をめぐってライバル関係にあったそうです。興味のある人は調べてみてください。
読書に話を戻しますが、読書は、様々な人や考え方、価値観、文化などにふれることで、自分の世界を広げてくれます。想像したり、余韻を味わったりするだけでも楽しいです。
ところで、最近、複数の小説を並行して読む楽しみを知りました。新聞や雑誌の連載小説を読むような感覚で、少しずつ読むことになりますが、その分、長く楽しむことができます。是非、一度試してみてください。
いよいよ来週から学校が再開されます。みなさんにお会いできることを楽しみにしています。